◆物語◆
晩冬を過ぎたが、春と呼ぶには少し肌寒い、そんな季節――
博麗神社の巫女は、空を見上げ静かに溜息を吐いた
「夜でも昼でも暗い空……。こんな毎日では気が滅入ってしまうわ」
巫女の呟くとおり、昼時にも拘わらず夜中のように暗い世界
それは以前解決した永夜事変に似て似つかない異変
天の色を黒く塗り替えただけのつまらない悪戯のようなもの
しかし空が暗ければ、陽の光が遮られ、大地は照らされない
巫女にとっても洗濯物は乾かず、灯りの用意も面倒な始末
「やっぱり、自分が……行くしかないのね……」
博麗の巫女は、その務めを果たすため重い腰を上げた
ただ巫女の雰囲気はいつもとはっきりと違っていた
気楽さは微塵もなく、どこか困惑の見え隠れする揺れた瞳
少しずつ、少しずつ、幻想郷も巫女も何かが変わっていった
それはやがて迎える、大きな戦乱の静かな予兆だった