ストーリー

春の紅魔館。館の外ではやれUFOだの空飛ぶ船だのなんだのと大騒ぎであったが、この館は騒ぎとも縁遠く、静かな佇まいをみせていた。

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紅魔館の地下に広がる図書館でもそれは同じ……かと思いきや、図書館の住人たちは一冊の怪しい書物の処理に悩んでいた。表題は「中世の魔物伝説」。書庫の整理中に、無造作に積まれた本の底から掘り出された一品である。見た目はただの分厚い本だが、明らかにおかしかったのはこの本から魔力のような何かが漏れ出していたことだった。

「ただの伝奇物……にしてはあまりに禍々しい雰囲気ね」

図書館の主がつぶやく。

「呪いの類でしょうか」

司書役の小悪魔が返す。

「しかもとびきりの呪いね……とにかく解呪して無力化するしかないわ」

手慣れた手つきで魔法陣を広げ、本に接触を試みる。しかしその瞬間、本が開き、瞬く間にあたりに嵐のような、濁流のような、形容しがたい何かが吹き荒れる。封印されていた魔力が、今まさに解き放たれたのだ。

突然の魔力の奔流に抗うことも許されず吹き飛ばされるふたり。

魔力の流れが止まったとき、すでにそこに図書館の面影はかけらもなく、ただ青い空と緑の大地が広がっていた。

「……むきゅー……」

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さて、一方紅魔館の外ではいつものように門番──名を紅美鈴という──が庭番などに勤しんでいた。客も少ないし平和そのもの。天気もいいし最高よね、といつものように鍛錬をはじめる。

気を練り、一点に集め、突き出す。一片の淀みもないいつも通りの動作ではあったが、今日は何かが違った。まさに拳を突き出したその瞬間、手の先ではなく足の下、まさに地面の下から何かが舞い上がるような感覚に襲われたのである。

「!?」

いや、実際には建物にも庭にも異常は無かったのだが、確かに体には不思議な、そう、「禍々しい」と形容するしかない気の流れが感じられたのである。

紅魔館の中で何かがあったに違いない。直感でそう感じた美鈴は急いで庭を駆け抜け、館の扉を開いた。

だが美鈴の目に飛び込んできたのは、見慣れた館の庭ではなく、見知らぬ荒れ果てた大地。

「え?これって……」

振り向いたそこには、いま確かにくぐったはずの玄関もなくなっていた。

遠くにかすかに聞こえる、聞いたこともない唸り声。

「……とにかく、前に進むしかないか」

 

門番の、ひとりぼっちの戦いが、まさに今始まろうとしていた。